前回に続き、今回も「裁量トレード上達のためのシステムトレード」をテーマにお届けします。
この記事では、練習に適したロジックの具体例と、初心者が陥りやすい注意点を詳しく解説します。
この記事を読むと
📌裁量トレードの練習に適したシステムが分かる
📌実際の練習に使えるロジックが分かる
📌初心者が陥りがちな避けるべきやり方が分かる
Contents
前回の振り返り
前回の記事では、システムトレードが裁量トレードの練習になる理由、初心者でもできるシステムトレード練習方法の概要、よくある失敗とその対策について解説しました。
直接この記事に来てしまった方はぜひお読みください。
▼ 前回の記事
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システムトレードで裁量トレード上達① 初心者でもできるシステムトレード練習法と注意点
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本日のテーマは「裁量トレード上達のためにシステムトレードを行う」です。 筆者自身は裁量型のトレーダーですが、初心者の頃はかなりシステム寄りのトレードを行っていました。 当時の経験から、システムトレード ...
👉 まずはこちらを読んでから進めると理解が深まります!
【目的別】訓練に適した基本ロジック
訓練用システムトレードのロジックとして適しているものは、シンプルで検証しやすく、一定の相場原則に基づいたルールであることが重要です。
以下に、初学者〜中級者の訓練に非常に適した代表的なシステムトレードのロジックを目的別に紹介します。
クリックするとそれぞれの解説にジャンプします。
訓練用ロジック
① トレンドフォロー型:移動平均線クロス戦略
難易度:★☆☆☆☆(初心者向け)
② ブレイクアウト型:HLチャネルブレイクアウト戦略(タートルズブレイクアウト戦略)
難易度:★★☆☆☆(初心者向け、やや裁量の余地がある)
③ 逆張り型:RSI+ローソク足パターンの組み合わせ
難易度:★★★☆☆(中級者向け、裁量判断を含む)
④ 時間帯型:朝30分以内の窓埋め
難易度:★★☆☆☆(初心者向け、やや裁量判断を含む)
⑤ ボラティリティ収縮・拡大型:ボリンジャーバンドスクイーズ
難易度:★★★★☆(中級者向け、裁量判断を含む)
① トレンドフォロー型:移動平均線クロス戦略
難易度:★☆☆☆☆(初心者向け)
**エントリー**
短期の移動平均線(例:5MA)が長期の移動平均線(例:20MA)を上抜けたら買い、下抜けたら売り。
**エグジット**
エントリーの条件と逆のクロスで決済、またはトレーリングストップ(一番進んだところから一定の値幅だけ逆行したら手仕舞い)
**学べること**
トレンドの継続性、ダマシへの耐性、手仕舞い戦略が損益にもたらす影響
ポイント
移動平均線のクロスは代表的なテクニカルシグナルの一つですが、きちんと試したことがある人は実は少ないのではないでしょうか。
実際にやってみると、ダマシのシグナルが想像以上に多いことに気付くはずです。
また、トレンドに乗れても、思うように手仕舞いのタイミングが訪れないこともあります。
その見返りとして、うまくビッグトレンドを捕まえたときはかなりのリターンが期待できます。
まさにトレンドフォローの苦しみと喜び(そして苦しい期間の方が長い)を味わうことができる手法です。
② ブレイクアウト型:HLチャネルブレイクアウト戦略(タートルズブレイクアウト戦略)
難易度:★★☆☆☆(初心者向け、やや裁量の余地がある)
**エントリー**
直近ローソク足20本の高値を上抜けたら買い、安値を下抜けたら売り。
**エグジット**
Risk/Reward比率固定(2:1、3:1など)、またはトレーリングストップ
**学べること**
躊躇なくエントリーすること、ロスカットの重要性、ダマシになりやすい/なりにくいブレイクの見極め
ポイント
2人の伝説的トレーダーであるリチャード・デニスとウィリアム・エックハートによって育成されたシステムトレーダー集団「タートルズ」が用いたシステムとして有名です。
非常に古典的なシステムですが、そのエッジは相場の原理原則に深く根差しており、ブレイクアウト手法の本質を学ぶことができます。
多くのシグナルがダマシに終わりロスカットの嵐になりますが、たまにしっかり勝てるので、たくさんロスカットしている割にあまり損が膨らんでいないことに気付くでしょう。
ブレイク後に注目しがちですが、ブレイクする瞬間、またその直前にどのようなことが起こっているか注意深く観察し続けることで多くのヒントが得られます。
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③ 逆張り型:RSI+ローソク足パターンの組み合わせ
難易度:★★★☆☆(中級者向け、裁量判断を含む)
**エントリー**
RSIが30以下(買い)または70以上(売り)に入った後、反転のローソク足パターン(ピンバーなど)でエントリー。
**エグジット**
Risk/Reward比率固定(2:1、3:1など)。
**学べること**
オシレーターの限界と補完、逆張りにおける損切りの速さ、裁量判断の効果。
ポイント
あえてローソク足パターン認識という裁量判断を加えた戦略です。
裁量を加えることで、ルールを破らずに柔軟性を持つ訓練ができます。
オシレーター単体ではちょうどいいタイミングでシグナルが出なかったりしますが、これを裁量の相場認識で補完します。
条件を満たすシグナルはなかなか出ないので、RSIがしきい値を超えているというだけでつい甘いエントリーをしがちですが、冷静にローソク足を見て判断し、事前に決めたロスカットポイントに到達したら潔く損切りしましょう。
④ 時間帯型:朝30分以内の窓埋め
難易度:★★☆☆☆(初心者向け、やや裁量判断を含む)
**エントリー**
寄付き価格が前日の終値を一定の値幅以上乖離している場合、逆張りでエントリー。
**エグジット**
前日終値に到達するか、あらかじめ決めたロスカット価格に達したら手仕舞い。どちらにも達しないまま30分が経過したら強制決済。
**学べること**
時間帯ごとの動きの癖、ルーズな損切りが有効な場面、出来高の重要性、銘柄の選択眼。
ポイント
一見とても有効そうに思えますが、実際にエントリーしてみると大きな逆行を食らうこともよくあります。
上記では事前に決めた価格でロスカットするルールにしていますが、損切りせずにやり過ごした方が良かったという場面を多く経験することでしょう。
そこからどうするかはトレーダー次第です。
ルーズな裁量ロスカットを受け入れるのであればハイリスク・ハイリターンに、タイトにこだわるならばローリスク・ローリターンになりますが、性格に応じて選択してください。
また、出来高がしっかりある銘柄を選択することが非常に重要です。
なお、この記事で紹介している戦略は株式を念頭に置いて紹介していますが、いずれもFXなど他のマーケットにも応用可能です。
例えばFXにおいてロンドンオープン時30分間に欧州通貨(EURやGBP)のレンジブレイクを狙うなど、ボラティリティが拡大する時間帯を狙った戦略には有効なものが多く存在します。
⑤ ボラティリティ収縮・拡大型:ボリンジャーバンドスクイーズ
難易度:★★★★☆(中級者向け、裁量判断を含む)
**エントリー**
ボリンジャーバンドの±2σラインが収束した状態からバンドブレイクしたら順張りエントリー。
**エグジット**
ボリンジャーバンド中心線を終値が超えたら手仕舞い、またはRisk/Reward比率固定(2:1、3:1など)。
**学べること**
ボラティリティが収縮・拡大するときの挙動や雰囲気の変化、相場状態に応じたRisk/Rewardのバランス、ダマシの見極め。
ポイント
何をもって「±2σラインが収束した状態」とみなすかは裁量判断の余地があります。
自分なりに一貫性のある見方を確立することが目標です。
バックテストにおいては一定の値幅などわかりやすい数字を固定して検証するのがよいでしょう。
ボリンジャーバンドを表示させると画面がごちゃごちゃしてしまうので筆者はあまり好きではないのですが、ボラティリティの拡大縮小を視覚的に理解することができるため、練習段階では上達のために有効なテクニカル指標です。
時間枠の選択について
ルールにない状況が発生したときは?
筆者の経験談
筆者はここで紹介した戦略は全て実際に実行・検証したことがありますが、特に長い間やっていたのが「② ブレイクアウト型:HLチャネルブレイクアウト戦略(タートルズブレイクアウト戦略)」です。
オリジナルルール通りに実行するのはもちろん、変形パターンや、建玉をピラミッディングする方法、あえて逆張りとして使うパターンなど、あらゆる方向から実戦と検証を繰り返しました。
その結果、重要なのはトレードルールそのものではなく、システムが機能する環境をしっかり見極める、という(ある意味当たり前の)結論に至りました。
これによって、システムトレードではなく、裁量トレードに移行するための心構えが育ち始めたともいえるかもしれません。
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建玉のコントロール方法を検証するのに役立つ書籍
また、「ブレイクアウト」というパターンが発生するときに起こるマーケットの違和感に対して敏感になりました。
これは文字で説明するのが大変難しく、あえて言うならば「価格がもやもやしている」という感じでしょうか。
単にレンジ相場になる、とか、出来高が増える、といった単純なパラメータでは説明できないものの、確かに認識可能なパターンが潜んでいるような気がする、ということです。
雰囲気をつかむ力というのは、裁量トレーダーの最大の武器になり得ます。
多くの熟練トレーダーが、

私は雰囲気でトレードしている
というのは、このような人間の感覚を利用していると考えられます。
システムトレードを行う中で、この雰囲気をつかむ力が養われてくれば、トレーダーとしての上達がぐっと近づくと思います。
補足:練習向けに避けたいロジック
複雑すぎるテクニカル指標の組み合わせ(MACD+RSI+ストキャスティクス+ボリンジャーバンドなど)
特にローソク足チャート以外に多数の画面を表示させたり、複雑な計算を使う指標は、裁量トレードに移行するときに足かせになる可能性があります。
テクニカル分析は過去の価格情報を加工したものにすぎません。
トレーダーはテクニカル指標をトレードしているのではなく、あくまで価格をトレードしているのです。
最終的に裁量トレーダーを目指すのであれば、なるべくシンプルにしておきたいものです。
↑こんな感じの画面です。かっこいいかもしれませんが、一度に矛盾するシグナルが出ることも多く、何が何だか分からなくなります。
多銘柄一斉監視系のシステム
一度に多数の銘柄を監視し、相関の崩れやトレンドの発生を利用する戦略には有効なものがありますが、初心者は集中力を乱されやすいという欠点があります。
練習段階として、まず銘柄数を絞って、マーケットの動きそのものに集中しましょう。
その上で、複数銘柄監視に自分なりの優位性が見えてくるようであればぜひ採用し、検証・分析・リアルトレードのサイクルに進みましょう。
トレード頻度が極端に少ないもの
今回の記事の主眼は「練習として」システムトレードを行うことです。
シグナル発生の頻度があまりに少ないシステムだと、検証に必要なデータがなかなか集まらないばかりか、相場に対する集中力も下がり、学習効率が悪くなってしまいます。
年1~2回しか起こらないビッグチャンスを捕まえるタイプではなく、コンスタントにトレードが発生するロジックを用いる方が初心者~中級者の時点では有効です。
流動性や板を無視したロジック
あなたの買いは、同数の売り手がいることによって成立しています。
特に株式トレードにおいては板の存在を無視するわけにはいきません。
チャートだけを見ると、1ティック抜きの売買を延々と繰り返していれば無限に勝てそうに見えることがありますが、実際にやってみた場合、果たして毎回板の先頭に注文を入れることができるのでしょうか。
あるいは、チャートは自然なのに、板を見るとスカスカで、順張りエントリーするには遥か上の売り指値を買いにいかなければならないという場合もあります。
扱う銘柄をよく選び、そのロジックを適用するための流動性が十分にあるかどうかはよく考えておきましょう。
↑例えばこのようなスカスカの板で、順張りの売りシグナルが出たとします。
1,334円の600株指値にぶつける形で売らなければなりませんが、現値が1,351円なので、100株売った瞬間に評価損1,700円を抱えることになってしまいます。
それでもなお利益が残る見込みがある戦略なのかよく検討しましょう。
流動性と難易度
続きは次回 実践・おすすめ書籍編へ
🔑基本ロジックをつかってトレードの練習をしよう
🔑システムトレードでマーケットの「雰囲気」をつかもう
🔑最初はなるべくシンプルに!
今回は裁量トレードの訓練に適したシステムロジックの紹介と、初心者が陥りがちな注意点を解説しました。
最終回となる次回の記事では、具体的な練習の進め方について実践フローを用いながら説明し、最後にトレード上達に役立つおすすめの書籍をいくつか紹介します。
最後までお読みいただきありがとうございました。
▼ 続きの記事
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