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マーケットメイクとは?証券トレーダーが担う役割と仕組みを解説

「証券会社のトレーダーって、どんな仕事をしているの?」

「マーケットメイクって聞いたことあるけど、具体的に何をするの?」

そんな疑問を持つ方に向けて、この記事では証券会社のトレーダーが担う『マーケットメイク業務』を、筆者の実体験を交えてわかりやすく解説します。

この記事を読むと

📌マーケットメイク業務とは何なのか分かる
📌マーケットメイクとプロップトレーディングの微妙な違いが分かる
📌マーケットメイク業務が果たす社会的役割が分かる

証券トレーダーのデスク

そもそもマーケットメイクとは

証券トレーダーの重要な業務の一つは、「マーケットメイク」です。

マーケットメイクとは、一言で言えば「市場に流動性を供給する仕事」です。

もう少しかみ砕くと、「買いたい人」と「売りたい人」の間に立って、常に値段を提示し続けることで、取引が円滑に成立するようにする役割を担います。

たとえば、株式市場や先物市場、オプション市場では、マーケットメイカーが「買い注文(BID)」と「売り注文(OFFER/ASK)」を常に掲示しておくことで、投資家がいつでも売買できる状態を作っています。

マーケットメイクとディーリングの違い

証券会社の自己勘定トレーディング業務には、大きく分けて次の2種類があります。

✅マーケットメイク業務

✅自己売買業務(プロップトレーディング、ディーリング)

どちらもトレーダーの仕事ですが、目的が異なります。

業務 目的 主な収益源
マーケットメイク 流動性供給・顧客対応 スプレッド(買値と売値の差)
ディーリング 会社資金の運用による利益追求 ポジションの値動きによる利益

マーケットメイクは、収益よりも市場の安定性や顧客への対応が重視される仕事です。そのため、セールス(顧客と直接話す人)とコミュニケーションをとりながら取引を重ねていくのが基本になります。

Mewpheus
Mewpheus

一人で画面に貼り付いてやる仕事ではない、ということですね。

マーケットメイクを行う過程で保有したポジションをどのようにさばく(ヘッジする)か、がマーケットメイカーの腕の見せ所となります。

対してディーリングは、証券会社に所属しながら個人トレーダーのように利益を追求していく仕事です。

Mewcle
Mewcle

マーケットメイカーはヘッジの一手段として、ディーリングのように値動きに「張る」ことで追加収益を狙うことも多いハモ。

証券会社の規模が小さくなると、顧客からの注文量が少なくなるため、マーケットメイクよりディーリングの比重が大きくなります。一般的に「証券トレーダー」と聞くと、ディーリングをイメージする人の方が多いはずです。

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マーケットメイクをより詳しく説明

BidとAsk

マーケットメイク(Market Making)は、以下の2つのプライスを提示する仕事です。

👉Bid(買値):投資家が売りたいときに買ってあげる価格

👉Offer(売値):投資家が買いたいときに売ってあげる価格

Mewpheus
Mewpheus

OfferはAskとも呼ばれます。FXをやっている方にはおなじみですね。

この価格の差をスプレッドといい、マーケットメイカーの主な収益源です。

これは金融機関が自己資金で行う取引(自己勘定取引=プリンシパルトレーディング)であり、一般投資家の売買とは異なる性質を持っています。

例えばFX業者は代表的なマーケットメイカーの一つです。

FXには取引所がないため、FX業者のBid/Askの価格でトレードする必要があります。

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具体例 トヨタ株のマーケットメイク

トヨタ株の例を使って具体的に見ていきましょう。

例えば、ある証券会社の現物株トレーダーがトヨタ自動車株(7203.T)のマーケットメイカーである場合、以下のようなプライスを提示します。

プライス 数量 意味
2,500円 bid 500,000株 トレーダーは2,500円で500,000株買う意思がある
2,510円 offer 500,000株 トレーダーは2,510円で500,000株売る意思がある

このスプレッド(2,510円-2,500円=10円)がトレーダーの潜在的な利益源です。

500,000株であれば、10円×50万株で最大500万円のスプレッド収益を狙える計算になります。

個別株には板があるため、わざわざトレーダーがプライスを提示する必要はないように思えます。

しかし、上記のような大口注文(12.5億円!)を板でスムーズに売り買いするのは大変難しいため、大口マーケットメイクが必要になります。

一方で、板にはすでにHFTなどの高速マーケットメイクアルゴが常に板を提示し続けています。

このため、証券会社のトレーダーが手動で板のマーケットメイクを行うことはほとんどありません。

マーケットメイクの流れ

①プライシングリクエスト(RFQ -Request For Quote-)

セールスは自身の担当顧客から~のプライスを提示してほしい、とリクエストを受け、自己勘定トレーダーにリクエストを送ります。

②プライスの提示

トレーダーはマーケットの動向や他の顧客、ライバル業者のポジショニングなど様々な条件を考慮しながら、その時点で最も適切と考える価格をセールスに返します。

顧客が売りたいのか買いたいのか、については通常伏せられていることが多いため、bidとofferの両方を提示します。

黒町鱧
黒町鱧

両方提示された価格を"Two-way price"と言うハモ。

マーケットメイクの魔術師

bidとofferが離れているほど(スプレッドが広いほど)収益は高いのですが、顧客は他の業者にもプライスを聞いていることが多いです。

そのため、あまりスプレッドを広げすぎると他社に注文を横取りされてしまいます。

上手なマーケットメイカーは、自身の収益性と他社との競争力のバランスがとれた絶妙なプライスをいつも提示し続け、常に顧客フローを抱えながら収益を残すことができます。

③注文の約定(やくじょう)

顧客がプライスに満足すれば、売りか買いのどちらかでトレードが成立(約定)します。

このとき、マーケットメイカーは顧客の相手方として逆のポジションをとります。

④ポジションの管理

たまたまマーケットメイカー自身が取りたいと思ったポジションをトレードできることは稀です。

リスク管理上無理のない範囲に抑えるため、様々な手段でリスク管理(ヘッジ)を行います。

ポジションに自信があるときは何もしない場合ももちろんあります。

ヘッジの手段としては下記のようなものがあります。

よくあるヘッジの手段

✅時間をかけながら板に注文を流す
✅連動商品(個別株に対して先物など)をトレードする
✅反対顧客をセールスに探してもらう

マーケットメイクの社会的意義

マーケットメイク業務には、市場の安定性を向上させる以下のような社会的意義があります。

✔️市場の流動性向上
売りたいとき、買いたいときにすぐ取引できる市場を形成する

✔️価格発見機能の補助
売り買い両方向の価格を提示し、公正な(fairな)市場価格の形成を助ける

✔️市場の安定性維持
プライス提示やポジション管理で継続的に市場に参加し、過度な値動きを抑え、市場の安定性を保つ

個人トレーダーの社会的意義

実は、上記の3点は個人トレーダーの社会的意義と同じです。

リスクをとって市場に参加する行為はマーケットの流動性を高め、金融市場の機能を活性化します。

マーケットメイカーはより積極的に価格を提示しているにすぎないのです。

トレードはギャンブルと揶揄されることもありますが、十分に誇れる仕事であり、背負うリスクや苦悩に見合う報酬が得られる世界だと思います。

ここまでのポイントまとめ

✔️ マーケットメイクは市場の値付け役
✔️ BidとOfferの差が収益
✔️ 大口注文に応じる役割が重要

1日のスケジュール:株式トレーダーの場合

スケジュールのイメージ

筆者の経験をもとに、株式トレーダーの1日の具体的なスケジュールを紹介します。

トレーダーの一日

🕰️出勤~市場オープン前の準備(~9:00)
🕰️場中(9:00~15:30)
🕰️ランチ(11:30~12:30)
🕰️大引け後(15:30~)帰宅まで

出勤~市場オープン前の準備(~9:00)

午前7:00~8:00ごろに出社するトレーダーが多いです。

出社後、海外セールスを交えた早朝ミーティングが開かれます。

NY市場の顧客動向などを頭に入れながら、当日に何を顧客にアプローチするか、トレーダーはどのようなポジションをとりたいと思っているか、などを共有し、1日の取引に備えます。

デスクでツールを立ち上げ、情報取集をします。

ほぼ全員の端末にBloomberg社のアカウントが登録されており、あらゆるニュースをスピーディーに入手できます。

人によっては通勤前や途中に日経新聞を読みますが、筆者は必要性を感じなくなったので購読すら辞めました。

寄り前に発注が必要だと判断した場合は、専用ツールを使ってオーダーを入れていきます。

Mewcle
Mewcle

筆者は8:00過ぎに出社しており、トレーダーの中ではかなり遅めでした。

場中(9:00~15:30)

顧客からのプライスリクエストは基本的に場中にやってきます。

意外かもしれませんが、寄り直後の30分間は相場の方向性が定まっていないため、静かなことが多いです。

10:00ごろからプライスリクエストが活発化し、トレーディングフロア全体がざわざわしてきます。

プライスリクエストを受けていない時間帯は基本的に待ちです。

マーケットメイカーは「待つ仕事」とも言われます。

もちろんポジションは何かしら常に抱えているため、マーケットの動きに合わせてポジション調整を随時行います。

プライスの提示を求められていなくとも、自分でポジションをとりたいと思ったときには、個人トレーダーなどと同様にトレードを行います。

人によってはデイトレやスキャルピング的な売買も採用するようですが、顧客からのプライシングリクエストが来たときは最優先で対応しなければならないため、画面に集中して張り付くようなスタイルは筆者には合いませんでした。

ランチ(11:30~12:30)

前場引け11:30~後場寄り12:30の間1時間がランチタイムです。

顧客のリクエストは大きく減りますが、ゼロにはならないため、全員でデスクを離れるわけにはいきません。

多くのトレーダーはデリバリーを注文したり、10分ほどでお弁当を調達してきたりで、すぐにデスクに戻ります。

Mewpheus
Mewpheus

昔は11:00~12:30の1時間半が昼休みでした。のんびりランチがとれる方がいいと思うのですが…。

大引け後(15:30~)帰宅まで

マーケットが引けた後も顧客注文が来る場合がありますが、基本的にはゼロになります。

日経先物・オプションなど、インデックス関連商品を担当している場合は、夜間取引が始まる17:00ごろに少しだけリクエストが活発化することがあります。

引け後に最も重要な作業は、当日のトレードを全て取引ツールに記録し、損益と持ち越しリスクをマネージャーに報告することです。

社内のリスク管理ツールやメールを通して行います。

オプションを内包した仕組債など複雑な商品の場合、ツールに正しく記録しないと計算エラーを起こすことがあり、オプショントレーダーはこの報告作業に何時間もかかってしまうことがあったりします。

トレーディングフロアの雰囲気は一気にまろやかになります。

また、社内のミーティングはこの時間帯に開催されることが多いです。

収支報告を終えたトレーダーは、当日の振り返りや翌日のプラニングを行い、それぞれ必要な作業をこなします。

18:00〜19:00ごろには、ほとんどの人が帰宅しています。

Mewcle
Mewcle

筆者は17時過ぎの定時に最速で帰ることが多かったです。遅く来て早く帰る人でした。

マーケットメイカーに求められるスキル

スキル

マーケットメイクを行う証券トレーダーに必要なスキルとしてよく言われているのは下記の通りです。

🔑地頭の良さ
🔑論理・数的感覚(ロジカルで計算が早い)
🔑コミュニケーション力
🔑ストレス耐性
🔑好奇心

日本における大手証券トレーダーは東京大学や東工大、早慶の理系学部出身という人物が非常に多いです。

これは、地頭や数的感覚が重視されるためです。

特に採用に人手をあまりかけることができない外資系では、このような「学歴フィルター」が非常に顕著になります。

コミュニケーション力は意外かもしれませんが、トレーディングの仕事はセールスとの共同作業によって成り立っています。

黒町鱧
黒町鱧

黙々と画面に張り付いているイメージだったハモ。

よく言われますが、実際は多くの時間をコミュニケーションに費やすことになる職業です。

一般的なイメージとは裏腹に、一人で一日中黙々と作業したい人にはあまり向いていません。

ストレス耐性に関しては、マーケットに向き合うから、というのもありますが、コミュニケーション面も大きいです。

様々な方面から矛盾する要求がくるため、人間関係に起因するストレスも多く、うまく対処するメンタルが必要です。

Mewpheus
Mewpheus

儲かるけど損しない戦略考えて!

プライス遅くない?

黒町鱧
黒町鱧
Mewpheus
Mewpheus

なんで下がってるときに買わなかったの?

・・・(『下がってるから売れ』ってさっき言ってなかったっけ?)

Mewcle
Mewcle

好奇心とは、マーケットに対する興味を失わず、常にトレードやビジネスのすき間がないか探し続ける資質を指しています。

トレーダーがアンテナを張る重要性

まとめ

🔑マーケットメイクは地味で安定志向の仕事
🔑市場の流動性を支え、顧客が取引しやすい環境をつくる
🔑マーケットメイカーにはビジネスパーソンとして高度なスキルが要求される

とくに筆者がやっていたオプション市場などでは、マーケットメイカーがいなければ成立しない取引も多く、証券会社にとって戦略的に重要な役割を果たしています。

「トレーダー」という華やかな響きとは裏腹に地味な仕事ですが、やってみると意外と楽しく、やりがいも大きいです。

別の記事では、証券会社ごとのトレーダーの違いや、証券トレーダーの収入、筆者が就活生からよく受けていたQ&Aなども執筆しています。ぜひ読んでみてください。

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  • この記事を書いた人
Mewcle

Mewcle(みゅーくる)

30代で不動産FIREを達成し個人トレーダーになった元証券トレーダー。
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